小野伸二をはじめとして南野拓実、大迫勇也、酒井弘樹、乾貴士、植田直道など錚々たる面々の表紙画像でド肝を抜いた「ONE LOVE」。数々のベストセラーを手掛け「伝説の編集者」として知られる見城徹をして「僕以来、久しぶりに出てきた編集者の天才」と言わしめる箕輪厚介編集で、「読者が後からその価格を自由に決める」という革新的フリーマガジン。
各選手が少年少女に向けて、自分の体験談や狭い場所でのトレーニング方法など選手のメッセージを選手の言葉で紹介する、というのが基本的な切り口。特に選手が自分のルーツを語る上で、多くが劣等感や挫折を糧にしたという記事が興味深い。
結局のところ、この本の価値はまず「存在させた」ことであると思う。どことなくサッカーダイジェストを感じさせる誌面には写真だけではっとさせられるような美しい記事もある。しかし多くの人が電子版や対象年齢を考えるとフォントはもっと大きくていいはずだし、各選手の経歴をしっかり構成したほうがいいんじゃないか、という意見はあるだろう。
しかし、これは「本」という業界に新しい価値を吹き込むかもしれない。箕輪厚介は「作る」という新しい価値観も説いている。それは彼が選手として所属する「リアルサカつく」、「ONE TOKYO」にも通じるところ。しかし「作る」という行為には必ずストレスと時間がともなうもので、それを超える価値観が新たに提供されることになるのか。これからも注目したい。