「英国人から見た〇〇」といえばショーン・キャロルが日本代表の試合などを中心にざっくり語る名物コーナー。フットボールの母国である英国人が対談形式で試合を斬るさまを「あるある……ねーよ」あるいは「ですよね」と突っ込みを入れながら気楽に楽しめるのがいいところ。さらに僕にとっては「日本にはビールとポテロングがある」とけだし名言を与えてくれた恩人ということになる。
ということで本書はそのインタビュー記事のまとめかとかと思ったら違った。そもそもオビには「保守的な育成は捨てよ」とあるからいわゆる「育成本」のようにも見える。しかし本質はどうも違いそう。
ショーン・キャロルは英国人。だから日本人の「忖度」気質などまるで意に介さないような切り口が面白い。ガチの差別チャントがいまだに歌われるという欧州リーグから見れば「JAPANISES ONLY」問題はたしかに大したこと無さそうだ。それは単なる無知が引き起こした悲劇だったと思うが、それにあえて向き合ってしまうショーンの生真面目さも伝わってくる。ただ「本田圭佑に意味のない質問をするな」という論調を本田圭佑本の著者が聞いたらちょっとだけ「おこ」になるかもしれない。
本は読み方ひとつでその楽しさがグンと変わったりする。居酒屋でするサッカー談義ほど楽しい事はない。サッカー村の村人なら誰だって「あるある……ねーよ」とビール片手にサッカーを語り合いたい。本書はやっぱりそれを与えてくれる……いわば「エアサッカー談義」を楽しめる一冊と解釈するとよさそう。引退セレモニー……やったらいいじゃん! 君は曽田雄志の引退セレモニーを知らないのか! あと「よっち」は僕らのSMAPなんだよッ!
結局のところ、こうしてあーだこーだ言う文化が日本人にないということなのかもしれない。「外野は黙ってろ」とある人は言うが、僕らはサッカーの外野手だ。だったらいろんな楽しみ方ができたほうがいい。
ただ定価の1584円に高いよ感があるのも確か。しかしKindle Unlimitedなら無料で楽しめちゃうので、お勧めいたします……!
(新井一二三)