サッカー村の住人なら一度は目にしたことのある「ドリブルデザイナー」岡部将和の一冊。2007年原初のFリーガーとして、当時名古屋と2強を形成していたバルドラール浦安で選手権の優勝を経験。その後唯一無二の肩書を背負って世界各地で活動。宇佐美や堂安のほかにもヴィシニウスやインドネシアの英雄、イルファンも指導したとされる。
99%抜くために必要な2つのアプローチ。
なにしろ99%抜けるのだというのだからすごい。JAROにモノ申されないのかと心配になるが、それが本当ならば心配は無用。その理論は「ロジック」と「テクニック」の二つで成り立っているという。そこにフィジカル的な要素は唱えられていない。
岡部の理論では、まずディフェンスの脚が届かない場所にボールを置くことを重視するという。サッカー界隈では特に物珍しい理論でもないが、そこから重要視されるのは「角度」だという。その角度によっては、たいていの場合シュートまで持っていけるというのだ。それが本書の唱える「絶対に勝てる間合い」だという。
本書ではその角度をどう形成するか、に焦点がおかれている。その中には、自分史上最速の縦を極めろなどという珠玉の言葉も用意されているからあなどれない。しかし、むしろここで注目したいのは、抜くためには「殺気を出せ」というひと言である。本書では理学的案要素も示されているのだが、その中に秘められたセンテンス。ロジックでは示せない何かの方にこそ引き付けられるのは自分だけなのだろうか。
ドリブル理論を彩る刺激的センテンス。
本書は終盤に従いメトロノームタッチやヘソで抜くドリブル、軸足リードといった刺激的な言葉を提供。最後にプロになる秘訣を自分の後悔をにじませながら、子供たちに伝えるように締めくくられている。
蛇足ではあるが、ヘソで抜くドリブルと聞いて多くのお父さんたちはルー・テーズ(もしくはジャンボ鶴田かミート君)のバックドロップを思い浮かべるであろう。岡部氏はテーズの薫陶を受けているのか。世代的には難しそうだが、もしかしたら桐蔭横浜大学の師匠である風間八宏の影響かも……と思うのは邪推が過ぎるだろうか。