轟やよねと再会した寅子たち。
多くの孤児に食べ物を分け与える彼らの行いはまさに”愛”のなせる技。
寅子は孤児のうちの1人、道男に家に泊まるよう言うが、家族の反応は苦々しいものだった……。
【虎に翼】第12週2話あらすじ
「お前だって他の役人と同じ。どうせ匙を投げるんだ」
旧カフェー燈台、現、轟法律相談事務所にて。
再会の挨拶もひと段落したころ、よねは子供たちにご飯を配っていました。
(轟)上野はずっとこんな有様だ。この寒さでまた、ガキがどんどん死んでいくぞ
そうならないために街に来たと返す寅子でしたが、よねは否定的な見解を示します。
(よね)どうせお前らも他のお役人と同じさ。机の上で理想をこねて、結局さじを投げる。手に余るガキどもを街から追い出せばいいと思ってるんだろ
もちろん寅子たち家庭局にそんなつもりは微塵もありません。そのための家庭裁判所も苦労の上創設したのです。しかし、無下にあしらわれてきた経験を持つ彼らには、どんな言葉をかけても効果がありませんでした。
(道男)大人は皆そうさ。俺らを虫けらみたいに見てきやがって
(轟)佐田。道男もタカシも空襲で親を亡くしている。……お前を疑っているわけじゃない
彼らは親を亡くし、戦後も腫れ物のように扱われ、心に大きな傷を負っています。
道男のとげとげしい物言いも、もとはと言えば心の傷が原因。轟は寅子の考えに理解を示しつつも、これ以上何も言わないことを求めました。
轟とよねが取り組む地域に根差した支援。これぞまさに”愛”
寅子が言葉を失った時、事務所のドアが開けられ、見知った声が聞こえてきました。
(汐見)おお、いたいた。多岐川さん、いました
如何にも役人らしく整った見た目の汐見と多岐川によねは敵意を隠しません。
一方多岐川も、失礼な奴に名乗る名はないと言い返します。慌ててお互いを説明する寅子。
(汐見)よねさん、あなたが……
(よね)はァ?
汐見はよねの名を聞き、どこか嬉しそう。もしかすると香子から話を聞いていたのかも。
寅子による両者の自己紹介が終わったあと、轟は多岐川に失礼を謝罪します。
しかしよねは、出来て間もない家庭裁判所を信じる気になど到底なれません。そのことでまた寅子と口論になりかけますが、多岐川は気にしていない様子。
彼の関心は食事を頬張る戦争孤児たちに向いていました。
(多岐川)道男くん、仲間に伝えたまえ。家庭裁判所は”愛”の裁判所だ。困っている者には必ず手を差し伸べる。君たちを拒んだりはしない
多岐川は去り際、よねと轟の顔を見ます。緊張で強張る2人でしたが、彼が口にしたのは労いの言葉でした。
(多岐川)地域に根差した支援……素晴らしいじゃないか
それだけ言い残し家庭局の面々は事務所から出ていきます。
しかし寅子は、どうしてもそれが出来ませんでした。
すべて国民は平等であって……(中略)……差別されない
壁に書かれた文字は、寅子が再起するするきっかけとなった憲法の条文。
寅子を疎んでいるように見えるよねも、寅子と同じものを支えに、ここまで生き抜いてきたのです。しかし今さら、何かが言えるわけでもなし。寅子は別れの言葉を伝えて、轟法律相談事務所を後にしました。
寅子の言葉は生温い?
それからすぐあと、浄化作戦という名目で子供たちの一斉補導が行われました。
トラックの荷台に乗せられた子供たちの行先は家庭裁判所です。
孤児院も、監護所も、少年院も、子供を預かることの出来る施設はどこも満杯。そのため処遇が決まるまで、少年少女たちは家庭裁判所の廊下で過ごすことになりました。
そんなある日、家庭裁判所の廊下に道男とタカシがいるのを発見した寅子。
聞けばタカシが連れていかれそうになっているところを道男が止めたものの、警官に殴られてここまで連れてこられたのだとか。
夕方。
仕事が終わったあとも、1人廊下に座り込んでいる道男。
タカシは預かり先が見つかったものの、彼はまだ見つかっていなかったのです。
(道男)じゃあつまり、俺は帰っていいってこと?
(寅子)そう伝えてくれと言われた。でも、私が探すから
ところが道男は、諦めない寅子に対して皮肉たっぷりに言いました。
(道男)今度サツがきたら、全員とっちめてやるよ。そしたら少年刑務所行きだろ
当然怒る寅子。しかし道男は、自分に何もしてくれない寅子の言葉を聞くつもりは毛頭ありません。彼に言われた「なまぬるい」という言葉。これが寅子の心に火をつけました。
勢いに任せた寅子。猪爪家に居候を増やしてしまう
(花江)それで、私たちに相談もなく連れてきちゃったの?
(寅子)……ごめんなさい
「なまぬるい」と言われ、寅子は「だったらうちで泊めてやる」と言ってしまったのです。
猪爪家皆が迷惑そうな空気を出す中で、はるだけは道男を泊めることを認めてくれました。
直明も口にはしていませんでしたが、はるの言葉を聞いて寅子に微笑みかけます。
直明が道男を風呂場に案内し、替わりの衣服を取りに来たはると寅子。
(はる)ああいう子が日本中にいるのよね。……この寒い中、外で眠っているのよね
同じ子を持つ立場として、子を残して死んでしまった両親たちの無念に寄り添うはる。
こうして猪爪家に住まう人間が1人増えたのでした。

過酷な生活を送る市民。よねの気持ちも分かるぞ……
多岐川さんが”愛の裁判所”と言い切ったことが、彼の信念のぶれなさを感じさせて非常によかった今日の放送。タカシくんと道男が来た時は「多岐川さんのことを信じてくれたのか!?」と思いましたが、そうではなかった様子……。
敵意剥き出しのよねさんに最初はそれなりの対応をした多岐川さん。
ところが子供たちが嬉しそうなのを見て、去り際には2人を褒めて帰ると態度を一変!
きっと彼らの子供たちへの”愛”を感じ取ったのでしょう。そうなんです。その2人はクラス内で1,2を争うほど他者への愛情が深かったんです!
”愛”の家庭裁判所に必要な人材なんです! いかがでしょうか!?
なんて、妄想してしまいました。
閑話休題。本日の考察は戦後の子供たちについてです。
興味深い記事を発見しました。

東京大空襲後、道男やタカシと同じように戦争孤児になってしまわれた方のインタビュー記事です。
毎日のように栄養失調で誰かが亡くなり、地下道での生活を余儀なくなされた子供たち。
生きるために違法な手段で食べ物を得る彼らに対する大人の仕打ちは惨いものでした。
でもね、必ずつかまるんですよ。ボコボコに殴られました。私たち浮浪児だから、死のうが生きようが、大人はそんなことおかまいなしでした
今日の放送のトラックで子供が運ばれていくシーンもそうでしたが、人の子を扱っているとは思えない所業でしたよね。
お寺や公的施設が子供を引き取る中で、一般家庭ながら戦争孤児を引き取る決断をされた方も多くいたようです。

(こちらのサイトは、関連記事も非常に読み応えがあります!)
道男もタカシやグループの皆を守るため、積極的に盗みを働いていたのではないでしょうか。
そして彼らが心を開くまで説得し続け、自分たちも苦しい中で食事を与えているよねたちに対する信頼は凄まじいものだと思います。
しかし寅子も信頼を勝ち取る手がないわけではないはず。
幸い、猪爪家には保護運動をしている直明と、理解を示しているはるがいます。
ここに寅子を加えた3人が道男と向き合い、彼の心を癒してあげられる展開になることを強く願っています……。

多岐川さんの言葉に胸打たれたネットの反応
もしかしたら直人だって直治だって戦争孤児になっていたかもしれない。それはそれとして、道男くんわざと嫌われるような態度をとっているようにも見えるね