【サッカー書評】「サッカーを知らない日本人」!?ネイマールに挑発されたら読むしかない。フットボール批評02を批評してみる。【サッカー大考察】

4.5
フットボール批評2の画像です 戦術論

 

こちらがカリカリして選手が委縮したらチームに躍動感がなくなりインテリジェンスを発揮する余裕はない。「そんなサッカーは御免だね」。本文中の反町監督によるけだし金言である。

「サッカーを知らない日本人」という刺激的な「フットボール批評issue02」の表紙はネイマール。

「ここが違うのさ」を頭に指をあてて三本指を立てるセレソンの彼はきっと3回目のファウルをもらったのだろう。今までネイマールがエア・ファウルで貰ったファウルはどのくらいなのかと思ったが違った。おそらく2014年10月14日、シンガポールの地でネイマールが4ゴール(頼むよ…)で日本を粉砕した時の写真。アギーレジャパン未だ芽吹かずと言った風を感じるが、ネイマールの1点目はやっぱりダイブからだった。

そしてオシムの表記はやっぱり「イビッァ」だ。

ということは当然木村元彦がいるのだとうと思ったら巻頭記事はユーロ2016で没収試合となったセルビア×アルバニアについての檄文から始まった。正直なところ、少なくとも日本人はそのニュースをすっかり忘れていたことだろう。

試合中にアルバニア主義の過激な広告を飛ばしたドローンの持ち主は不明とされているが、サッカーが政治問題の火に油を注いだことは確かで、悲しむのは選手。そして本文はアギーレの八百長疑惑をへていよいよ本題に入っていく。

「サッカーを知らない日本人」。その真相。

日本人がサッカーを知らないのは当然だ。だって日本はサッカーの国じゃない。相撲は知っているだろう、野球も知っているかもしれない。柔道に言わせれば国外の選手はマリーシアがないらしい。

だったらフットボールは? 人気スポーツにはなったが、ドイツ人やスペイン人に偉そうに語れるかはわからない。

編集長の森哲也は、選手だけでなく指導者、ファン、メディアなども含めたサッカーへの理解が深まれば、「この国のサッカーはもっと強くなる」としている。

さっそく小澤一郎がスペインの指導者から日本の育成事情を斬り捨てる。それによると日本の戦術理解度はスペインより4年遅れているという。

僕は東京の育成年代をそれなりに見て来た自信はあるから、よく言われるスペインにおける育成の戦術主義には否定的だ。でも、日本の戦術理解度はスペインより4年じゃなくて、8年は遅れていると思う。

理屈を教えられない日本の育成年代はそこにある。

例えば東京の高校で戦術的なチームはいくつある? 久我山はそれに近そうだが、彼らには戦術よりもフィソロフィーを感じる。結局のところ日本の育成はトップトップのチームとその他の差が大きすぎて戦術もクソもない、というのが実情だろう。

正直、少なくとも東京で選手権を狙えるチームで、パスを足元に正確に付けられるチームが何チームあるのか? 日本の育成年代は結局そういうレベルだし、そういう選手に導いているのは指導者だ。

ただ、戦術を達成したいがため、逆説的にサッカーがうまくなる、というのはありそう。アイコンタクト、ウェーブ、フラット3……。日本人はお題目が大好きで、それがある時にサッカーは盛り上がる。であれば、「サッカーを知る」ための言葉もそのお題目であれば一気に普及する可能性があるかも。だとすればそれこそジャーナリストの出番である。反町の金言けだしと言ったところか。

コンテが語る。亘も語る。

本書ではそのお題を「インテリジェンス」として語る一幕も。そしてその言葉については本書でコンテがある答えを明快に打ち出している。イタリアに来た外国人がなぜインテリジェンスを持ち帰っていくのか?

そして亘崇詞によると、アルヘンティーナは賭けサッカーの中で賢さを見出していくらしい。日本でそれができないなら……ほかの何かで埋め合わせをするしかない。

結局のところ、日本では6年の歳月を経て興国高校のような「個の育成」を前面に押し出す高校部活が注目を集めている。しかし興国のエッセンスをよく見ると、確かにスペイン式のメソッド……エコノメソッドを取り入れているらしい。

とするならば、「日本人がサッカーを知ると強くなる」は確かに証明され始めている。もしかしたら内田監督は「フットボール批評issue02」を読んだのかも? そんな、いや、まさか。少なくとも興国は強い。

(新井一二三)

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