【サッカー書評】混迷する日本に強化ビジョンを示せ!「アギーレ解任後ハリル就任前」フットボール批評04を批評してみる。【サッカー大考察】

フットボール批評04 書評

「友達集団の組織に存在意義はありません」と岡野俊一郎は言う。つまり社内政治で敗れたら山口へ行け、ということだろうか?

「名将」を生かすも殺すもマネジメント次第、のキャッチコピーが躍る「フットボール批評04」の刊行はアギーレ解任直後。

前号によると予定は「アジアカップ総括」だったはずだから急遽の特集変更。

当時はすったもんだ八百長疑惑の末に黒でも白でもないけどGLAYだから解任というよくわからない顛末だったアハビエル・アギーレ。

正直なところ、解任の理由はそうでもなかったアジアカップの結果(決勝トーナメント1回戦敗退)と八百長疑惑の合わせ技一本だったという気はするけれど。

「アギーレとは一体何だったのか」というキャッチを夢想する。

けど、そうしないのが「フットボール批評」流。

刺激的なコピーよりもロングテイルで歴史に残る提言を重視したということ。もしかして社内刊行物でコピーが被ったから政治的に…なんてそんなことあるはずない。

巻頭には森哲也編集長の檄文が躍る。日本サッカーは継続した強化はなされているか、と言う。

オシム以降にできるはずだった日本独自のサッカー文化は実現できず。

岡田監督は勝負論で結果を残したが、ザッケローニが作ったのは結局勝負弱いチームだった。アギーレは? 強いチームに弱くて弱いチームには強かった。

続いて木村元彦が就任間近とされたハリルホジッチについて説明している。

「謎のアルジェリア代表をワールドカップで活躍させた」ハリー監督。

その時世間のハリルホジッチ評は「謎のアルジェリア代表をワールドカップで活躍させた」監督だったように思う。

その采配が体力任せのカウンター一辺倒だったなんて誰も気づきはしないのだが、いま読み返すと当時の監督人事の報道はなかなかひどく浮かび上がる。

ストイコビッチ、フェリペ・スコラーリ、ビエルサ。当時の岡野俊一郎によるとラウドルップが最有力という話も踊る。少なくともストイコビッチはないでしょという気はするがどうなんだろう。

やがて誌面は「特に何をしているかよくわからない」技術委員会の存在意義について割かれていく。

日本は代表監督がアイコンだから大事。なるほど。オフトの年俸は1500~2000万? へぇー。森保一はハードワーカーだった。えっ!?

そういえば森保はカニーヒアも認めた元祖ボランチ

それ以前は日本に3列目の概念がなかったということなのか。今とはそもそもハードワークの定義が違いそうだ。

しかし何しろアジアカップ準々決勝敗退ではとにかく記事が作れない。編集部のうらみつらみが聞こえてきそうな記事編成を感じてしまう。

なんたってアジアカップはシュート35本打って1-1のPK戦負け。

敗因を分析しろと言われても難しいのかもしれない。

だったら現実的に攻めさせてカウンターで戦った方がいいんじゃないか、というハリルホジッチの采配もなんとなくわかるような気がする。どちらにしろこの状況でアギーレを叩いて死人にムチ打ち。少なくとも日本ではあまり受け入れられなそうだ。

しかしそこはプロの編集部、あの手この手で読者を納得させようとさまざまな仕掛けを施している。

ちなみにこの年のサッカー本大賞は「サポーターをめぐる冒険」(中村慎太郎)、翻訳サッカー本大賞は「孤高の守護神 ゴールキーパー進化論」。

この号からクオリティーマガジンなる「THE Blizzard」との提携も始まったそうで、第一回のインタビューは

イビチャ・オシム

おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおいいい!!

そこはイビツァじゃないの!?

もしかしてどっちでも良かったの!?
まぁ翻訳が木村元彦でないのならいいということ。なのかもしれない。

個人的に誌面を通して最も興味深かったのは小澤一郎による育成論だ。

これによると当時トレセンではパス練習を費やしたという。しかし乾真寛によるとそれにより消される個性があるのではないかという。

ようは、育成は個にフィーチャーしたほうがいいのではないかという論点。

アレ、待てよ。

育成はグループでしろ、戦術も取り入れろ。

僕の記憶が正しければ、それが今叫ばれている育成メソッドだと思う。

当時と言ってることはだいたい同じで今も個を叫ばずグループを叫ぶ

まさか日本の育成は結局進歩していないのではないのかと不安がよぎる。

結果が出ている興国や静学。東京ローカルなら町田JFCの育成スタイルではだめなのかな? なぜそれが取り入れられないのか僕にはよくわからない。

このままでは日本のサッカーは死んでしまう。そんな気さえしてくる。

さあ、次の特集は「Jリーグに夢はあるか?」だ。

(新井一二三)

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